5月上旬、前年に採取して保管しおいた卵を、柿渋とわらび粉をまぜて作った糊で和紙に貼り付けます。この作業を「のり付け」と呼びます。

糊付けされた和紙を小さく切り、幼虫の餌となるクヌギの新芽に近い枝につけ孵化するのを待ちます。この作業を「山付け」と呼びます。

孵化した幼虫(1齢)は、クヌギを盛んに食べながら脱皮を4回行います。脱皮するごとに2齢、3齢と呼び方が変わり、最終5齢を迎えます。 飼育者は餌が不足しないように、葉がたくさんある場所に虫を枝ごと移動させます。この作業を「切り返し」と呼びます。

7月上旬、孵化から2カ月弱を迎えると繭作り(営繭)が始まります。 繭づくりは3日間昼夜を徹して行われ、営繭開始後10日くらいで収穫することができます。

7月下旬、飼育者は収穫した繭を「安曇野市天蚕センター」へ持ち寄ります。 翌年の卵にする種繭、上質な繭、形の悪い等規格外の繭に選別します。 上質な繭は生糸に、規格外の繭は紬糸にするため、乾燥処理をした後、繰糸者へ引渡します。

7月の終わり頃になると、羽化が始まります。 早朝、羽化した蛾から、メスとオスを選び、ひとつの籠に入れて交尾を促して採卵させます。この作業を「蝶あわせ」と呼びます。

温暖期に入るまでに、蝶かごから卵をもぎとり、サラシ粉等で膠着物を取り除いてよく水洗いをします。卵は、クヌギの芽吹きに合わせて孵化するよう温度調整のため冷蔵庫で保管します。